コラム

「ブランド」は育てるもの、使うものではない ~ソニーでの企画経験から

2020.11.21

その他

「ブランド」は育てるもの、使うものではない ~ソニーでの企画経験から

「ブランド」とは「信頼」です。
「ブランド」をとても大切にする企業、ソニーでの企画経験から、「ブランド」について創業者の言葉や私自身の考えについてお伝えします。

目次

ソニーは世界の中でも「ブランド」というものを最も大切にする会社のひとつと言えるでしょう。
ソニー創業者である井深大氏の想い、アイデアと技術者魂を、同じく創業者である盛田昭夫氏がソニーという世界の「ブランド」へ創り上げ、元会長大賀典雄氏がその「ブランド」の重要性を社内に浸透させて育てたというのが私個人としての印象です。
ソニーという環境で企画をしてきた経験から「ブランド」というものについて考えました。

■「ブランド」とは「信頼」

「ブランド」の定義についてはネット等にもたくさんの解釈が記されていますが、
「ブランドとは何か?」を一言で言うなら、「信頼」というのが私の見解です。
さらに言うなら、「 他にはない明確なイメージを伴った『信頼』」です。

車、ファッション、食品、IT、家電など、世界中のそれぞれの分野に多くの「ブランド」企業があります。
「ブランド」企業には必ず他と一線を画した独自の明確なイメージがあり、また社会からの信頼を得ていなければ「ブランド」企業とは言えません。
「イメージ」と「信頼」、どちらが欠けてもブランドにはなりません。

「ブランド」とは「信頼」です。
よく言われるように、トラブルや不祥事があると一瞬でブランドは落ちてしまい、それを取り戻すには相当の時間と労力がかかります。
逆に、ここで「信頼」を取り戻すと、ブランドをさらに上げることもできます。
こうやってブランドが強くなっていくのだと思います。

■ブランドは企業の生命である

SONYという社名を発案した盛田氏のブランドについての言葉です。
ソニーがトランジスタラジオでアメリカ進出しようとした際に、当時アメリカでは有名だった会社からOEM条件で提示された10万台の注文を断り、まだ生まれて間もないSONYのブランドを重視した話は有名です。

引用: Sony History 第23章 「SONYブランドの出発」
https://www.sony.co.jp/SonyInfo/CorporateInfo/History/SonyHistory/2-23.html

ブランド、社名というものにここまでこだわった人はなかなかいないのではないかと思います。
こうしてまだ日本に企業ブランドの考えがなかった頃から、ブランドが重要視され創られてきました。

■「SONY」を育てるのがいちばん大切な仕事

私は大賀氏が社長の時代にソニーに入社しましたが、大賀氏は会社のイベントや会同のたびに
「ソニー社員の最も大切な仕事は”SONY(エス・オー・エヌ・ワイ)”の4文字を育てることだ」
といつも言われていました。

ご自身が社長になるときの記者会見でも、「抱負は?」との質問に対し、

「この会社の財産は建物でもなければ土地でもない。最大の財産は「SONY」の4文字です。次の人にバトンを渡す時までに、どこまでそのイメージを高められるか、それが私のいちばん大きな仕事です。」
と答えています。

引用:大賀典雄語録  ソニー・マガジンズ

工業製品にデザインの要素を重視したのも大賀氏で、見た目だけでなく「機能美」という言葉をよく使われていました。
使いやすくて美しい、機能にデザインが融合していることを重視し、いつも厳しいコメントをされていました。
そういうところもソニーのブランドにもつながっていったのだと思います。

SONYロゴの取り扱いも大賀氏の社長時代に厳密に規定されました。
大賀氏が「 SONY(エス・オー・エヌ・ワイ)の4文字」と話されたときの太くて低い声は今でも耳に残っています。

■「ソニーらしいかどうか」が企画の判断基準

私がソニーの記録メディア事業部門の企画チームに参加したとき、ウォークマンの開発者として有名な元ソニー副社長 大曽根幸三氏が副社長兼事業部門トップでした。

大曽根氏が我々の商品企画に対して最終承認するのですが、大曽根さんの商品企画への判断基準はとても明快で、「ソニーらしいかどうか」 というものでした。
そして、その「ソニーらしい」が意味するものは、


・まだ他社が誰もやっていないものかどうか
・他社よりダントツにすごいかどうか


のどちらかでした。

企画担当の説明を聞いて「ソニーらしい」と判断すれば「すぐにやれ!」という号令がかかり、企画担当が「ソニーらしい」かどうかについてモゴモゴしていると、説明の途中でも躊躇なく打ち切りとなっていました。
さらに、他社よりダントツにすごいものでも「どこが新しいか」という観点は常に問われていました。

これは創業者井深氏の「他がやらないものをやる」 という精神そのもので、こういったこだわりがブランドを育てたのだと感じています。

この「ソニーらしいか」という言葉は、ソニーではよく聞かれる言葉です。
人によって自分の「ソニーらしい」は異なっていると思いますが、「ソニーらしい」かどうかを考える社風がブランドを生んでいるのだと思います。

■ ブランドは育てるもの、使ってはいけない

多くの企画会議で「ブランドが強み」とか「ブランド戦略」という言葉を聞きます。
この言葉は一見ブランドを大切にしているように受け取れますが、実はブランドの力だけに頼っているとも言えるのです。

私は「 ブランドは使うものではなく育てるもの 」だと考えています。
ブランドを武器にして勝負するということは、ブランド以外、武器にできる魅力がないと言っているのと同じです。
ブランドに頼らなくても勝負できる魅力や売りをつくりだすのが企画マンの仕事です。
そうすることでブランドがさらに磨かれていくのです。

既にブランドが確立している企業に勤める人であってもそうでなくても、常にブランドを意識し育てていこうとする気持ちこそが大切です。
その意識は自分の仕事にも必ず活きてくるはずです。

■ まとめ

ソニー創業者たちの言葉と、彼らから学んだブランドに対する私の考えをお伝えしました。

ブランドは育てるもの。
企画に携わる人は常にブランドを意識する、育てることがとても大切です。

・社会に対してどのように貢献するのか、自分たちの役割は何かを考える
・「他にはない明確なイメージを伴った信頼」をつくる
ことがブランドを育てていきます。


感想などご連絡いただけるとうれしいです。
ご質問、不明点も遠慮なくご連絡ください。

※画像の書籍:
・井深大語録
・盛田昭夫語録
・大賀典雄語録
いずれもソニー・マガジンズ発行

※ソニー、SONYは、ソニー株式会社の登録商標、または商標です。

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