商品・サービスには顧客価値・顧客ベネフィットを定義しよう!~お客様視点での企画の有効性~

2023.03.17

モノづくりにおいては、どうしても開発する商品の性能やスペックだけに目が行きがちです。
しかし、その先の「モノを売る」ことを見据えると、顧客価値(お客様にとっての価値)ー顧客ベネフィットとも言いますーを意識することが重要になってきます。
顧客価値について見ていきましょう。

■ メーカー側の視点とお客様の視点

先日企画サポートをしている企業の商品企画会議で顧客価値(お客様にとっての価値)の話になりました。

会議の中で、特長あるとてもよいアイデアが出たのですが、
「いいですね!じゃ顧客価値はどうなるでしょう?」
という私からの問いかけに
「う~ん… たしかに…顧客価値は考えていなかった」
と、会議メンバーで考え込んでしまいました。

メーカー側、即ち、つくる側の視点からモノづくりに入ると、どうしても商品の性能やスペックが優先されがちです。
最初から”顧客の視点”や”顧客価値”まで意識するのはなかなか難しいところです。


しかし、この顧客価値がしっかり定義できていないとやはりモノは売れないですし、興味を持っていただくこともできません。

■ 顧客価値を掘り下げる

例えばこんなことがありました。

私が監視カメラの技術マーケティングのマネージャーをしていた時のことです。

新製品の企画段階で、主要なシステムインテグレーターさんやソフトウェアパートナーさんを訪問して、技術の検証や製品をシステムに組み込んでもらうお願いをしていました。

商品企画チームから、4K監視カメラの企画があがってきました。
4K監視カメラは、放送局向け4Kビデオカメラや家庭用4Kビデオカメラの技術を監視カメラに応用したものです。

4KなのでHDとは比較にならないほど、画像はとてもきれいで感動的です。
でも、監視カメラはきれいな画を見るためのものではありません。
感動も必要ではありません。

では、「4Kになることによる監視カメラの”顧客価値”はどこにある」でしょうか?
顧客価値の観点から考察してみると

①4Kになると画素数がHDの4倍になるので、一台のカメラでより広い範囲を映すことができるようになります。

少し、顧客の価値が見えてきましたが、まだ緩いですよね。
広い範囲を映せると何がよいでしょうか?

②1台で広い範囲を映せるということは、カメラの設置台数を減らすことができます。

ゆえに
③値段が高い4Kのカメラでも、トータルとしては安く抑えることができます。

言い換えれば
④同じ台数のカメラを設置すれば、より広範囲を監視できることになります。

そうすると、
⑤人件費も削減できるかもしれません。

さらに、
⑥街や空港の監視を担当している人にとっては、より安全を守ることができ、安心につながります。


監視カメラが4Kになることによるお客様の価値が見えてきました。

ここまで落とし込んで初めて話を聞いてもらえるようになります。

「4Kの監視カメラです」と言ってもお客様はそのベネフィットについて知識がないので
「すごいですね」で終わってしまい、
「これ必要だね」になりません。

お客様にベネフィットについて語れることが重要ですね。

■ 2つの「顧客価値」

顧客価値には2つの種類があります。
・機能的価値
・情緒的価値

機能的価値とは、言葉通り、その商品やサービスが持つ機能によって生まれる価値です。
上記の監視カメラの場合は機能的価値にあたります。

情緒的価値とは、その商品やサービスによって生じる気持ち的な価値になります。
ブランドなどは情緒的価値の代表です。

たとえ同じ機能をもつ商品だとしても、そのブランドを持っていることによってステイタスが得られたり、気持ちが高まる、という価値になります。
ビジネス的に言うと、そこがお客様にとっての費用対効果になります。

私が経験した監視カメラの事例をあげましょう。

中国のとある大都市の監視カメラを管轄している警察を訪問したときのことです。

通常の監視には中国製の監視カメラを設置し、政府系の建物がある地域はソニー製の監視カメラを設置いただいていました。

いろいろ理由を聞いてみると、
確かに性能も異なる点もあるのですが、監視をつかさどる方々の安心度合いも上がるという理由もあるとのことでした。
”機能的価値”と”情緒的価値”を認識いただいた例です。

■ まとめ

モノづくり企業の場合、どうしても性能やスペックに目が行きがちです。
もちろん性能やスペックといった要素は大事なのは言うまでもありませんが、商品やサービスを売る場合には、顧客からの視点にも目を向けることが重要です。

そのために「顧客価値は何か」をしっかり定義すること。

それがあるとどんないいことがあるのか?
それでさらにどんなことがいいのか?
など、2段、3段と考えていくのがコツです。

■ 余談…

記事を書いていて昔のことを思い出したので、余談を少し。

中国の大都市とはコロナでもニュースになった武漢です。

実はソニーの監視カメラの設置テストでうまく接続できないというトラブルがあり、中国現地のサポートチームでは解決できず、日本の責任者がすぐに来るようにという呼び出しで、エンジニアといっしょに呼び出しの翌日に武漢を訪問したのです。

期待が大きいところにトラブルとなり、さらに現地サポートで解決できずで、お客様はかなりお怒りモード。

私は若いころにバックパッカー一人旅で中国の重慶から武漢まで長江を船で旅したことがあり、船でいっしょだった武漢の人の家に泊めてもらうなど、武漢は思い出の場所でした。

かなりのお怒りモードと聞いていたので、その頃の写真を引っ張り出して持参し、挨拶のときに写真を見せながら武漢の思い出話をしたら、警察の方がとてもよろこんでくれ、意気投合。

夜は白酒(中国のとても強いお酒)で乾杯してフラフラに。
そんな中、同行したエンジニアが頑張ってくれてトラブルも解決し、また武漢がよい思い出の場所になりました。

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