商品企画マン・新規事業開発者必見!戦略的発想とは?知っておくべき二大戦略【後編】ランチェスター戦略

2021.05.08

新規事業開発や商品企画、企画推進には戦略的発想が不可欠です。
戦略的発想の基本中の基本である二大戦略「孫子の兵法」と「ランチェスター戦略」について、新規事業開発や企画推進の上でどう解釈するのかについてお伝えします。
【後編】は「ランチェスター戦略」についてです。

■ 戦略的発想してますか?

” 戦略発想してますか?”

私がソニーの企画チームに参加したときに、当時の上司が貸してくれた 元ソニー副社長 岩城賢さん の書籍タイトルです。
昭和54年初版の本ですが、今読んでもとても感化されます。

ビジネスにおいては、ほとんどの場合、競合やライバルが存在します。
「オンリーワン戦略をとっているからライバルはいない」 と思っていたとしても、それがよい市場ならば必ずライバルが現れます。
その中で勝っていく あるいは、 負けないでいる ことが大切になってきます。
そのためには戦略的発想が必須です。
「戦略8割、戦術2割」と言われるように、勝利への起因は、 戦略による効果の方が圧倒的に大きくなります。


岩城賢さんの本では、戦略には2つの思考があるとされ、次のように示されています。
1. 大局的に全体を見渡す戦略
2. 状況突破を工夫する柔軟な創造の戦略

さらに、企業内においては、「市場や社外に対しての対外戦略」と「社内でそれを突破していく社内戦略」も重要と書かれています。


戦略的発想をするために、知っておくべき二大戦略として
「孫子の兵法」と「ランチェスター戦略」をお勧めします。

【前編】では「孫子の兵法」についてお伝えしました。

【後編】では「ランチェスター戦略」についてお伝えします。

■ ランチェスター戦略とは

ランチェスター戦略はとても実践的です。
第一次大戦時に、英フレデリック・ランチェスターが 提唱した法則で、 第一法則と第二法則 があります。 第一法則:刀などで戦う古典的な戦闘を想定した法則
第二法則:機関銃などによる近代戦を想定した法則


この戦略については多数書籍もありますのでご興味がおありでしたら勉強してみてください。

さて、ランチェスター戦略をビジネスに応用したのが、 日本人の田岡信夫氏による 「ランチェスター市場戦略論」です。
市場のシェアポジションにおける法則 として体系化されました。
ランチェスター戦略には、ビジネスにおいて参考になる重要な2つのポイントがあります。

①弱者の法則・強者の法則
②市場のシェアポジションの原則

次に、この2つのポイントをみていきましょう。

■ 弱者の法則・強者の法則

まずは、自社が市場において ”強者” なのか、”弱者” なのか をしっかりとらえることが重要です。
その上でその立場にたって戦略的に発想していきます。

【弱者の法則】

ライバルに対して自分が劣っている場合や 新規参入の場合は「弱者の戦略」をとります。
「弱者の戦略」の基本は “差別化” と “強者のスキを狙う” です。

競合やライバルの売れている商品やサービスを見ると、つい自分もその方向に進みたくなりますが、それでは勝てません。
ぐっとこらえて、勝てるポイントや強者のスキを狙った差別化 を創りましょう。
機能、地域、ターゲット層などを細分化し、 差別化できるところを探します。

【強者の戦略】

よく「弱者の戦略」のみを重視する方がいますが、必ず「弱者の戦略」と「強者の戦略」を 使いわけるセンスを身につけてください。
なぜなら、今は ”弱者” かもしれないあなたも、必ず ”強者” になることがあるからです。
差別化された商品やサービスを導入したとき、あるいは、新しい市場を創造したとき、その時点であなたはライバルに対して “強者” になります。
そのとき「強者の戦略」を取らなければ、ライバルに抜かれてしまいます。
これはかなり大切です。

「強者の戦略」は、 “ミート戦略(マネ戦略)” と “弱者に弱者の戦略をとらせない” です。
ポイントは、次の3つ。
・面展開、包囲作戦
・もぐらたたき
・出鼻をくじく

強者になったら、弱者が出てこれないように面展開します。
そして弱者が出てきたらつぶす。モグラたたきです。(言い方はわるいですが・・・)
そこで出鼻をくじいてつぶさないと弱者がどんどん強くなっていきます。

しつこいですが、この考え方はとても大切です。


【近い相手と戦う】
もう一つ、 ランチェスターには大切な原則があります。
市場全体を見ることは大切ですが、戦う時は近い相手と戦うのというのが基本になります。
マラソンと同じですね。
目の前の選手を追い越すイメージです。
・頭上の競合 (すぐ上の相手) → 弱者として戦う
・足下の競合 (すぐ下の相手)   → 強者として戦う
・対等の競合     → 勝てる場所・強みを探す

市場において戦略的に戦うポイントをまとめます。

■ 市場のシェアポジションの原則

この原則を知っておくと、目標シェアを設定できるので便利です。
社内のプレゼンテーションにも役立ちます。
ただし、市場創造型の企画など、まだライバルや競合が定義できない場合は不向きです。


目標シェアは以下のように定義されています。

2.8%:拠点目標値
6.8%:存在目標値
10.9%:影響目標値
19.3%:第2上限目標値
26.1%:下限目標値
41.7%:安定的目標値
73.9%:上限目標値

私自身ソニー時代に本当にこの法則の通りだと実感しました。
では、ひとつずつ見ていきます。
※言葉が少し過激なところが ありますが、 戦略論的によく使う言葉ですのでご容赦ください。

■ 2.8%:拠点目標値 競合者としての存在価値は無いに等しいが、 市場の一角に存在しているというシェア
まだ市場に価値を提供できていないということです。
新規参入の場合はまずはこのシェアを 目指します。
ここまでは何をしても誰も見ていないことを認識しておきましょう。
逆に強者の場合はこの相手を見つけて、しっかりつぶしておくことが大切です。

■ 6.8%:存在目標値 はじめて市場から存在が認められるシェア 市場全体への発言力はまったくない
ようやく存在が意識され始めるシェアです。
このくらいになると市場全体や強者を 意識し始めることがよくありますが、
まだまだ弱者としての存在です。
自社が強者の場合に ライバルがこのシェアに迫ってくると 煙たくなってくる存在です。
手を打っておく必要があります。

■10.9%:影響目標値 存在が市場全体に影響を与えるようになり、 シェア争いに巻き込まれる値
成長市場では黒字、停滞市場では赤字となる。
赤字と黒字の境となるシェアで、非常に重要です。
ですから、なんとか11%を超えるシェアを獲得する ことが大切です。
市場が安定している時は黒字ですが、為替や景気などの悪影響があったり、
強者が価格戦略など技をかけてきたりすると、赤字となることが多いシェアです。
このシェア近辺のビジネスをお持ちの場合は心当たりがあるはずです。
私も担当していたいくつかのカテゴリーが 10%前後でした。
まさに、黒字、赤字をいったり来たりで、なんとか15%にあげようと努力していた ことを思い出します。
原則をしっていると、原則にもとづいた目標値を設定でき、企画やビジネスがやりやすくなります。
プレゼンの説得力も増します。

■19.3%:第2上限目標値 競合状態の中で上位グループに入る値
次の26.1%までは、1位であっても地位は安定しない。
シェアが20%になると上位となり、1位となるときもあります。
競争状態にもよりますが、ライバルがひしめき合い、戦国時代のような状態です。
がんばって抜け出し、26%をめざしましょう。
戦う相手が”強者”か”弱者”かを良く見極め、戦略的にいきましょう。

■26.1%:下限目標値 競合状態から抜け出して、トップグループに入るシェア
マラソンで言うと、2位グループとの差がひらき、安定したトップグループに入ります。
ビジネスも安定してきます。

■41.7%:安定的目標値
3者以上の競合の間で、その地位は圧倒的に有利で、 安定した収益となり、
事後の立場が安定する値 ここまでくると安心です。
収益も安定し、ダントツとなります。
シェア40%は大きな目標となります。
40%を下回ると1位であっても2強の状態など、 ダントツでない場合もあります。

■73.9%:上限目標値
独占状態が生じて、その地位は絶対的に安全な値。
しかし競争が無いため新機軸が生まれず、市場としては停滞する。
絶対的に安定的なシェアがこの値です。
このシェアを超える市場では、競争が無く、一般的には拡大していない市場となります。
市場活性化の策をとるか、企業として 別の新規事業へチャレンジするなどの活動へ意識を向けましょう。
現在はビジネスモデルが複雑化し、市場シェアが明確に分かりにくい場合もありますが、
複数の競合からなる市場では、この市場シェアの原則を知っておくと戦略立案に役に立ちます。
あなたも競合、ライバルとのシェアがどうなっているか を調べて分析してみてください。

■ まとめ

ビジネスにおいては、ほとんどの場合、競合やライバルが存在します。
競合、ライバルに対しての戦略的発想が必須になります。

【後編】では、ランチェスター戦略についてお伝えしました。

ランチェスター戦略はとても実践的で、大きな2つのポイントがあります。

①弱者の法則・強者の法則

   弱者のとるべき戦略ー”差別化”  ”強者のスキをねらう”
   強者のとるべき戦略ー” “ミート戦略(マネ戦略)”   “弱者に弱者の戦略をとらせない”

②市場のシェアポジションの原則

  原則を知って、自社のシェアを分析する

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