手段が目的になっていないか?ー具体事例から検証するー
「目的なのか、手段なのか」を意識することで、仕事の効率は格段に上がります。
分かっていても残念ながら、仕事を進める上で「手段が目的化してしまっている」ことはよくあります。
「手段が目的化する」とはどういうことなのか。
今回は具体事例をみていくことによって「目的」を意識することの有効性についてあらためて検証してみましょう。
■ 「手段が目的化する」とはどういうことなのか
以前、「目的と手段」を常に意識しよう! 新規事業・新商品開発の企画推進における注意点というコラムを書きました。
「目的と手段」を意識することで仕事の効率は格段に上がるにもかかわらず、
実は仕事を進める上で「手段が目的化してしまっている」ことはよくある、
という内容です。
コラムはこちらからご覧下さい。
何か実行するときには目的が存在します。
目的を達成するために手段があるわけですが、その手段をすること自体が
目的になってしまうという本末転倒なことがよく起こります。
恥ずかしながら私自身もふと気づくと手段が目的になっていることがよくあります。
わかりにくいので、私自身や私の周りで手段が目的化している具体事例をいくつかご紹介したいと思います。
① DX(デジタルトランスフォーメーション)
最近多いですね。
DXはほぼバズワードに近いと思っています。
業務のデジタル化による効率アップのことです。
手段が目的化してしまう事例としては今一番多いのではないでしょうか?
つまり、業務の効率アップをすることが目的なのに、
デジタル化すること自体が目的になってしまうという例です。
もちろん、DXで業務効率を向上し業績を向上させている企業は多々あります。
そのような企業は、DXを採り入れる以前に目的や課題が明確です。
その手段としてDXを検討しているからうまくいっているのです。
逆に言うと、DXを導入したのにうまく行っていない企業は
DXの導入自体が目的になってしまっていると言えます。
「世の中DXだ! うちも遅れないようにDXを導入しよう!」
想像できますよね。
高い費用をかけてDXを導入したのに全く使われなかったり
逆に効率が悪化してしまうというケースも少なくありません。
DXはあくまでも手段です。
必ず目的を明確にし、手段としてDXを検討していきましょう。
② データ活用
少し前に騒がれたワードですね。
ビッグデータ活用とも言われていました。
ソニーに所属していた私の最後の仕事が、
業務用機器の特殊機能をライセンスとして顧客に提供する事業の立ち上げでした。
Webプラットフォームも運用していたので、顧客の情報やどのライセンスや
どの機能がよく使われているかなどの情報がビッグデータとして蓄積されていきます。
ちょうどそのころ、この“ビッグデータ”がほぼバズワードのようになっていて
「ビッグデータを活用しろ!」
という指令が各事業部の企画やマーケティングチームに飛んでいました。
そこで、いろいろな事業部から相談を受けてビッグデータの活用法にトライアルしたのですが、
うまく進んでいく部署というのは、やはり目的、つまり知りたいことや仮説がしっかりしています。
逆に、データ活用をすることが目的になってしまっていると
一生懸命にデータを分析したにもかかわらずその結果を見て
「ふーん、なるほど」
くらいで終わってしまうことがよくありました。
③ ユーザー調査
「ユーザー調査」も同じです。
データ活用する、データ分析するときは、まず「何を知りたいのか」を具体化し
その上で仮説をたててその検証のためにデータを活用しましょう。
④ フレームワーク
フレームワークの活用も手段が目的化してしまうことがあります。
フレームワーク自体はよくできても、フレームワークを埋めたからそれで完成ではありません。
フレームワークを埋めることが目的になってしまい、それで終わってしまうことがよくあります。
フレームワークを使って考え、そこからヒントを得たり、自身の企画の抜け漏れをチェックする、
企画を研ぎ澄ましていく、という目的で使いましょう。
⑤ 1on1ミーティング
私はコーチングスクールの講師もしているので、この1on1ミーティングの話は本当によく出ますし、
相談をうけることもしばしばです。
先日も大手企業の管理職をつとめる友人とこんな会話がありました。
「今流行りの1on1ミーティングをしろという号令があって始めてみたんだけど、
全くうまくいかないんだよ。」
「よく聞く話しだね。その1on1ミーティングは、どんな目的で実施しろという
号令になってるの?」
「いや、人事からは“1on1ミーティングを実施するように”という指示だけだよ。」
「そうか。 それはつらいね。 あるあるだよね。」
この話は本当にあるあるです。
他の企業でうまく行ったと聞いたから、今流行っているから、という理由だけで、
1on1ミーティングを実施すると、こうなってしまいます。
自社の課題は何で、1on1ミーティングをすることで何を達成したいのかを明確にし、ルールを設定する。そしてそれらを関係者に共有したうえで実施する必要があります。
1on1ミーティングにも、課題や目的によっていろいろなやり方や事例があります。
その友人にも、いろいろな事例を紹介しました。
また、1on1ミーティング自体はとても効果の高いものなので、
少なくとも自部署だけでも、その目的や目指したいことをチームで共有したらどうかと提案しました。
1on1ミーティングは典型的な手段です。
それが目的化しないように気を付けましょう。
■ タスクの目的を再確認してみる
いかがでしたでしょうか?
他にも手段が目的化してしまっている事例はたくさんあります。
目的は、当然企業によって人によって異なります。
また、目的は一つではなく複数ある場合もあります。
状況はまちまちですが、大きなタスクから小さなタスクまで
何かうまく進まなかったり、しっくりこないときは、
「そもそも、俺たち何の目的でこれをやってるんだろう?」
と、そのタスクの目的を再確認してみるとよいかもしれません。
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