製造業のサービス化(サービタイゼーション)とは?
新規事業開発チームのご支援をしている中でよく話題に上り、また多くのお問い合わせをいただくのが
製造業のサービス化(サービタイゼーション)
というテーマです。
製造業大手さんのサポートでは、ほとんどがこのテーマがらみです。
同じ課題をお持ちの方も多いのではないでしょうか?
このコラムでは「製造業のサービス化」について実例を交えてお伝えします。
目次
■ 製造業のサービス化とは
「製造業のサービス化」という言葉をよく聞かれるかと思います。
「製造業のサービタイゼーション」などとも言われます。
よく耳にするこれらの言葉はイメージだけが先行していて
具体的にはよく分からない、というのが実情なのではないでしょうか。
実際に私もクライアントさんからよく聞かれます。
あらためて「製造業のサービス化」について見ていきましょう。
製造業のサービス化とは、つくり手視点で言うと
商品(プロダクト)の製造販売にサービスの要素を付加するビジネスモデル
のことです。
最近注目されているビジネスモデルですね。
言い換えると、製造業者が 商品をつくるだけでなく、
“サービス事業” にも関わっていくビジネスモデルです。
”モノ” から ”コト(体験)” へ
もしくは
「モノ売り」→「コト売り」への転換
もテーマとしては同じです。
ではなぜかつてのモノの製造販売のみの時代から
サービス化が重要視されるようになったのでしょうか。
それは、顧客価値(=企業価値)を最大化するためです。
以前の記事に書いた
「人間の欲求は永遠に続き、テクノロジーが進化する」
という言葉が、ここに当てはまります。
かつては、お客様の欲求をモノで満たしていました。
そこへインターネットやネットワーク、データ情報が普及してサービス化が加わり、
ビジネスモデルが変化してきます。
お客様の欲求(価値)がモノそのものだけでなく、
世情の変化によってモノのサービス化へと転換していく
場合もあるということです。
■ サービス化の方法は企業次第
一般的にお客様への価値の提供方法は以下の3つに分類されます。
◆商品(モノ)だけ
◆サービスだけ
◆商品+サービスの両方
これらのうち
価値の提供方法が「商品+サービスの両方」であるのが「製造業のサービス化」
であり、これは大きく2つのパターンに分類できます。
① 商品を提供する製造業が、商品に付随するサービスも同時に提供していくパターン
② 商品を提供する製造業が、新たにサービス事業を提供していくパターン
どちらのパターンにしても製造業の方々にとっての悩みは
この ”サービス事業” にどう取り組んでいくかということでしょう。
モノづくりに貢献してきた製造業がサービスも提供する事業に取り組むというのは
なかなかハードルが高いことだと言えます。
誰もが答えを知りたいですし、
それこそ「製造業のサービス化」のために何をすればよいのかと
コンサルタントに答えを求めがちです。
しかし、”サービス事業” は
「企業によって答えが様々で、ひとつの正解というものはない」
というのが私の考えです。
正解を探しに行くのではなく
自分たちにあったサービス事業を自分たちで考え企画していくことが大切です。
■ サービス化自体が目的になっていないか
「製造業のサービス化」でありがちなのが
サービス化することが自体が目的になってしまうことです。
サービス化が目的になってしまうと
とにかく事業をサービス化するのだという気持ちが優先になってしまい、
なかなかお客様にとってのメリットまで考えが至らなくなってしまいます。
結果、サービスの方向性が見つからなくなります。
製造業でサービス化を検討実施する場合、大切なのは、まず
① お客様にとっての価値は何か?
② お客様の事業がそれによってどのように発展するか?
をしっかり定義すること。
そしてその上で
③ その手段としてその価値をどのように提供するのがよいのか?
この順で考えると方向性が見えてきます。
また、前述した世情の変化も念頭に置いておいて
サービスの方向性を考えていきましょう。
■ ソニーでのサービス化事業の実例
私がソニー在職中、B2B業務用分野に携わったときは
サービス&ソリューション事業部 や サービスビジネス部 などという名称の部署で
いわゆる ”製造業のサービス事業開発” を担当してきました。
製造からサービスへの転換は苦労などよく分かっているつもりですが
実際担当してみると、なかなか大変です。
ソニーで経験したサービス化事業の実例を2つ挙げてみます。
【記録メディア事業の実例】
記録メディア自体はモノですが、お客様の欲求(価値)は
・映像や音声コンテンツのアーカイブ(保存)
・ディストリビューション(配布)
になります。
それが、次のように変遷していきました。
テープ → ディスク → HDD・メモリー → 配信(サービス)
この視点で
・自分たちが現在提供している商品(モノ)の顧客欲求(価値)は何か?
・その次の姿や究極の姿は何か?
を考えると、方向性が見えてきました。
【放送局向けカメラの特殊機能の提供サービスの実例】
特殊機能とは、当時でいうと8Kや超スーパースローモーションなどです。
従来は特殊機能をすべて商品に搭載していた
↓
(お客様)
すべてのカメラには不要
必要なカメラでのみ使いたい
↓
特殊機能を外だしし、必要なカメラのみに搭載できるようにした
↓
(お客様)
必要なカメラもいつも使うわけではない
必要な時だけ使いたい
↓
MonthlyやWeekly など一定期間だけ搭載できるようにした
↓
(お客様)
必要と思ったときにすぐに機能を購入し使いたい
↓
クレジットカード決済ですぐに機能を有効化できるようにした(海外のみ)
このように提供する方法がどんどん発展していきました。
結果的にサービス化が進んだわけです。
■ サービス化を目指して見えてきたこと
ソニーでの実例では
まさにサービス事業化や「コト」事業を立ち上げることがミッションだったのですが、
最初は何をすればよいのかさっぱり分かりませんでした。
ですが、試行錯誤を繰り返し、実際にさまざまな立上げを経験するうちに
見えてきたものがあります。
それは
「モノ」、「コト」や「サービス」などのワードにとらわれず、
「自社が持つ価値」や「開発した価値」をどのように提供するのか
を考えることが大切だということです。
その結果は
やはり「モノ」のみの提供をすることがベストのこともあれば
「サービス的な事業」をも提供することがよりよい方向性であったりと
それぞれの事業によって違ってきます。
初めからサービス事業化や「コト」事業を立ち上げることが目的になっていては
本当にお客様に提供できる価値が何か、見失ってしまいますね。
前述したようにサービス化すること自体が目的になってしまっては本末転倒です。
それだけは避けたいところです。
製造業のサービス化は
モノの製造とは全く異なる考え方と事業形態になるので、
まずは小さくトライアルして経験を積むことが大切です。
■ まとめ
今後の展望を考えると
製造業がサービスとして価値を提供することはマストになるでしょう。
自社のビジネスに合う形は自社で考えて試してみるしかありません。
サービス化を検討する場合は
① お客様にとっての価値は何か?
② お客様の事業がそれによってどのように発展するか?
③ その手段としてその価値をどのように提供するのがよいのか?
を考えると方向性が見えてきます。
サービス化すること自体が目的になってしまっては本末転倒です。
ぜひ、お客様の価値から考えてサービス化した方がよい場合は
お客様にとっての価値をみつけてサービス事業にトライしてみてください。
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