プロジェクトを確実に推進するコツ【前編】綿密な計画
2020.12.08
新規事業開発や新商品開発で企画やプロジェクトを確実に推進していくには、「綿密な計画」と「柔軟な実行」が重要です。
この二つをバランスよく意識することが、プロジェクトを確実に推進していくコツです。
前編として「綿密な計画」についてお伝えします。
新規事業開発や新商品開発でプロジェクトを確実に推進していくための重要事項はいろいろありますが「綿密な計画」と「柔軟な実行」はそのひとつです。
綿密な計画:柔軟な行動を前提として、できる限り綿密に計画をたてる 。
柔軟な実行:計画に縛られず、柔軟に実行する。必要なら計画を修正する。
これらが中途半端だとトラブルや想定外のことが起きた時に大きなスケジュール変更を余儀なくされたり、下手をすると企画やプロジェクトが振り出しに戻ってしまうこともあります。
ひとつひとつは意識されているかもしれませんが、この二つをバランスよく進めることが、プロジェクトを確実に推進していくコツです。
今回は前編として「綿密な計画」についてお伝えします。
目次
■ 綿密な計画はなぜ必要か?
アイデアが整理され企画構想がある程度固まってくると、いよいよ企画として推進していく段階になります。
企画マンやプロジェクトリーダーは、スケジュールをしっかりたて、関係者をリードしながらプロジェクトを確実に推進していく責任が発生します。
“最小の労力と最短のスケジュール”で、“最大の成果”をあげるのが、企画マンやプロジェクトリーダーの腕の見せどころです。
いくらよいアイデアでもその後のプロジェクト推進がうまくないと、最終的に形にできなかったり、形になっても大幅にスケジュールが遅れたりしてしまいます。
あるいは初期投資が想定以上に膨らんでしまい、導入はされたもののビジネスとしては失敗となってしまうことも少なくありません。
複雑に絡むタスクをスムーズに進捗させ、一度崩れてもまたすぐ立て直せるようにするには、綿密な計画を立て、想定されるトラブルやリスクを洗い出しておくことが重要です。
■ 上手な計画のたて方
では、上手に計画をたてるにはどのようにすればよいでしょうか?
ここではエンジニアが立てる技術的な設計スケジュールではなく、企画としてのプロジェクト全体の計画やスケジュールを対象としています。
企画やプロジェクトを推進するにあたり、直近だけ、たとえば商品や事業の導入までだけの計画を立てる方もいますが、ラフでよいので可能な限り将来までの計画を立てることをお勧めします。
計画のレベルにならなくても目標や構想でも構いません。
具体的には以下のようになります。
①プロジェクトのミッション、将来ありたい姿の設定
②開発開始までの企画段階の計画、スケジュール
③導入までの計画、スケジュール
④短期計画(導入から1年くらい)、中期計画(導入から3~5年先)
企画やプロジェクトに合わせてアレンジしてください。
これらの計画、スケジュールの設定は、直近を立ててから中期計画へ進めても、中期的な全体を整理してから直近へ落とし込んでもどちらでも構いません。
立てやすい計画から立て、全体をどんどんブラッシュアップしていきましょう。
ひとつずつ見ていきましょう。
■ ①プロジェクトのミッション、将来ありたい姿の設定
すでに企画やプロジェクトをスタートする段階でプロジェクトのミッションが明確になっている場合は、それらをあらためて確認しましょう。
まだ明確でない場合は、企画やプロジェクトのミッションは何か、目的は何か、将来どうありたいのかをぜひ明確にしてください。
これらを明確にしないまま、ただ新規事業を立ち上げたい、新商品を開発したいと言われる方がよくいらっしゃいますが、ミッション、将来のありたい姿を明確にしておくことで、企画やプロジェクト自体が強くなります。
さらに、そこに向かって計画を立てていけばよいので、とても計画がたてやすくなります。
ミッションがコロコロ変わるのはよくありませんが、進捗しながらよい方向に変わっていくのは一向にかまいません。
いつまでに何をやるかの計画を立てる前に、ミッションやありたい姿を設定しましょう。
企画やプロジェクトのミッションの重要性については
「プロジェクトミッションと理念の明文化”が企画を強くする」
の記事でもお伝えしていますので、参考にしてみてください。
■ ②開発スタートまでの企画段階の計画、スケジュール
通常は、まず開発スタートなど人・モノ・金を具体的にかけるまでの計画、スケジュールをたてます。
企画自体をどう進めていくか、未解決のタスクをどう解決していくかの計画、スケジュールになります。
企画自体がまだ固まっていない場合はそれも含めてタスクに落としてください。
各タスクがどのように関連しているかを確認し、それぞれを関連付けてパズルを組み立てるように計画していきます。
企画の進め方やタスクについては、こちらの記事「企画の進め方【その1】企画をスタートする前にやっておくべきこと」
「企画の進め方【その2】仮説の構築と検証の進め方」
「企画の進め方【その3】導入計画のたてかた」
も参考にしてください。
ここでのコツは、半年以内のタスクについては、仮設定でもよいので何月何日と日付まで指定しておくことです。
「タスクAがX月Y日に終了すると、それを受けてタスクBがスタートし、X月Z日までに終了する」 と言った具合です。
スケジュールチャートに落とし込みます。
半年より先のタスクについては、何月だけでなく、対象月の上旬/中旬/下旬くらいの粒度でも構いませんが、タスクが半年以内になってきたら日付まで設定しましょう。
そうすることでタスク同士の関連性の漏れを無くすことができます。
実行ベースで変更していくのはまったく問題ありません。
有識者や関係者に確認やアドバイスをあおぎ、抜け漏れのない確実な計画をたて、柔軟に進めていきましょう。
ここでは触れませんが、MECEの考え方も重要ですので、参考にしてください。
■ ③導入までの計画、スケジュール
続いて、商品やサービス導入までの具体的な計画をたてます。
ここでも半年以内のタスクについては、可能なものは何月何日と日付まで仮で指定しておくのがコツです。
関係者が多くなってくると、いくつものタスクや関係者が複雑に絡み合ってきます。
どのタスクが他のどのタスクと関係しているかをきちんと整理し、関連づけておきます。
もうひとつ重要なコツがあります。
計画に沿って一つひとつ実行していきますが、必要に応じて計画は修正していくことを前提としておきましょう。
よほど簡単で小さい規模のプロジェクトでない限り、走り出すとトラブルや課題が多く発生します。
スケジュールにバッファーを設けるなど、柔軟に対応できるようにしておくことが確実に進捗させるコツとなります。
この段階では導入までの体制がある程度整っているはずですので、関係者にも計画を共有し、考えられるリスクを洗い出しておきましょう。
そして関係者に、計画は必要時には柔軟に変更する旨を伝え、その時は協力してほしいことをあらかじめお願いしておきましょう。
トラブルが起きると必要以上に大騒ぎされたり、ネガティブな意見を言い出す関係者も出てきます。
あらかじめお願いしておくことで、柔軟に協力してもらえるようになります。
冷静に柔軟に対応できる計画をたてましょう。
■ ④短期計画(導入から1年なくらい)、中期計画(導入から3~5年先)
予定通り進むかどうか分からないのになぜ将来の計画まで必要か、という声が聞こえてきそうですが、そこまで見据えることにより直近の計画の抜け漏れを防ぐことにあります。
たとえば、商品やサービスを導入した後に、顧客サポートやメンテナンスなどで想定以上にコストがかかってしまうことがよくあります。
また、初代モデルや初代バージョンだけを一生懸命企画し、次世代をいつ出すかを計画していなかったために、ビジネスがうまく継続しないなども多々あります。
とくに新規事業の場合、運用実績がないため、このような想定外の課題が多々発生します。
推定レベルでよいのでできる限りのことを洗い出し、事前に備えておくことが重要です。
私自身、実際に事業や商品を導入したものの、将来の想定が甘く、導入後に予想外の苦労をしたり、ひどいときは事業継続を断念せざるを得なくなったことが何度かありました。
今となってはとてもよい勉強になったと思っていますが、導入まではこぎつけたものの事業企画としては失敗となりました。
できる限りの計画を想定し、リスクを洗い出しておきましょう。
ラフでよいので、ある程度の洗い出しができたら、走りながらブラッシュアップしてきましょう。
■よい計画とは
では、計画のたて方が分かったとして、よい計画とはどのような計画なのか簡単に触れておきましょう。
先にも触れましたが、プロジェクトは進捗していくに従い、当然予期せぬトラブルや想定外のことが多々起こります。
よい計画とはこの想定外が少ない、さらに起こったとしても想定外度合いが小さい計画です。
トラブルやうまく行かないことが起こっても、想定内であれば、そこでリーダーは右往左往することはなく、関係者も安心して対応できます。
想定されていれば、他のタスクへの影響を最小にできます。
スケジュール全体を後ろにスライドしたり、あらかじめ想定してあるバッファーでその遅れを吸収し、全体スケジュールへは影響しないように食い止めます。
トラブル時に冷静に処理し、逆にリーダーの株をあげましょう。
腕の見せどころですね。
リスクがしっかり想定され、実行ベースでの想定外が最小になる計画が、よい計画と言えるでしょう。
■ 悪い計画とは
では、逆に悪い計画、甘い計画ではどうなるでしょうか?
計画が甘いと、何かひとつのトラブルが起きたときに他のタスクに大きく影響してしまい、何度もスケジュールが変更されてしまいます。
最悪の場合はスケジュール変更が重なり、全体スケジュールにまで大きく影響し、筋が悪いプロジェクトとみられてしまいます。
そのような場合はプロジェクト推進に長けたアドバイザーについてもらうか、どうしようも無ければ一度リセットしリーダーを交代するのも得策かもしれません。
会社やプロジェクトのことを考えると正しい判断の場合もあります。
■ 計画を確認するコツ「鳥の目、虫の目、魚の目」
ここまで直近から中期までの計画のたて方をお伝えしてきました。
ここでは立てた計画を確認するコツとして「鳥の目、虫の目、魚の目」で確認することについてお伝えします。
鳥の目:全体を俯瞰して見る
虫の目:詳細を抜け漏れなく見る
魚の目:流れをつかむ
「鳥の目、虫の目、魚の目」はいろいろな仕事やタスクに応用できます。
多くのブログが投稿されていますので、参考にしてみてください。
ひとつずつ見ていきましょう。
【鳥の目:全体を俯瞰して見る】
直近のスケジュールと中期的なスケジュールをそれぞれの粒度にあわせて、鳥の目をもって俯瞰して確認します。
これによって各タスクがきちんと関連付けられているか、タスクの抜けや漏れ、リスクがないかを確認できます。
詳細はいったん気にせず、大きく上から全体を眺めるイメージで確認します。
鳥の目で見て、バランスの良い計画、スケジュールを立てましょう。
【虫の目:詳細を抜け漏れなく見る】
直近の計画は、虫の目をもって抜け漏れなくダブりなく、MECEの考え方でしっかり確認します。
調査済、整理済の項目だけのまとめをよく見ますが、不明なところは不明、調査中は調査中と定義し、その解決案を記しておくと、マネージャーや関係者は安心できます。
マネージャーや関係者を安心させるのも企画マンやリーダーの重要な仕事です。
【魚の目:流れをつかむ】
鳥の目(俯瞰)と虫の目(詳細)で立てた計画を時系列で動的にシミュレーションします。
そうすることで静的に確認していた時には気づかなかった抜け漏れが見えてきます。
とくに関連付けられていたタスクどうしがうまく連携しているかを確認できます。
実際に計画を実行するときも、並行して進むタスクを魚の目で動的に流れをつかみながらリードしていきましょう。
「鳥の目、虫の目、魚の目」でうまく見ながら、抜け漏れの無いバランスよい計画をたてて実行することが推進のコツです。
■ まとめ
企画やプロジェクトを成功に導くための重要なタスクのひとつ、計画の立て方についてお伝えしました。
アイデア発想力:1、実現力:99ともいうように、どんな素晴らしいアイデアでも実現されなければ机上の空論に終わってしまいます。
綿密な計画をたて柔軟に実行していくことで、最小の労力と最短のスケジュールで、最大の成果を実現できます。
企画リーダー、プロジェクトリーダーの腕の見せどころです。
皆さんがいい企画マン、すばらしいリーダーと一目置かれることを期待しています。
プロジェクトを確実に推進するコツ【後編】柔軟な実行 も併せてご覧ください。
ご意見など頂けるとうれしいです。
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